今回は砥石(人造砥石)のお手入れの話になります。
包丁をしばらく砥石で研いでいてこんなことがありませんでしたか。
- 砥石の形が変わってきた
- なんかつるつる滑って研ぎにくい
- 前より研ぐ力が弱くなった感じがする
- 砥石にひびが入ってしまった、割れてしまった
これらは砥石あるあるの現象です。(あってはいけないんですが)
今回は砥石のお手入れ、特にこれはやらないといけない、逆にやってはいけないことも書いていこうと思います。
これを読み終わる頃にはもう砥石のメンテナンスに困ることはないと思います。
できるだけ簡単に解説したいと思いますね!
あと今回は人造砥石の前提で話を進めていきます。
天然砥石については別項目で解説したいと思います。
面直し、ドレッシング
砥石のメンテナンスといえば基本的にこの2つです。
「面直し」(めんなおし、つらなおしともいいます)と「ドレッシング」です。
初めての方もいると思うので勿論面直しが何なのかも解説していきます。
またいきなり面直しやドレッシングの話に入る前に砥石についても簡単に順番に解説していきます。
そもそも面直しとは
砥石は包丁を研いでいくと摩擦でどんどんすり減っていきます。
砥石、包丁との相性で早い遅いこそあれどんな砥石でもいつかすり減っていきます。
砥石全体を完璧にムラなく使用していれば一部分だけへこんでいくことはないんですが研ぐのが人間である以上そんなことは不可能です。
そして一部分がへこんだ砥石で包丁を研ぎ続けると
- 包丁が型崩れする(包丁の形がかわる)
- まる研ぎ(刃先が丸くなる)になる
- 片刃の包丁が両刃になってしまう
- 研いでも包丁が切れなくなる、前ほど切れない
- 研ぐのに時間がかかる
といった弊害が出てきます。はっきり言っていいことは1つもありません。(あえて丸くハマグリ刃にする研ぎ方もありますがそれはまた別の話です)
特に片刃の包丁が両刃になってしまうと自力で元通りにするのはほぼ不可能でしょう。
そうならないようにするために砥石専用の面直しという道具を使って砥石をできるだけ平面に保つために砥石をこすることを「面直し」といいます。
ドレッシングとは
ではドレッシングとはなんなのか。
砥石は包丁を研いでいると包丁の鉄クズの成分が出てきます。
その成分が砥石の小さな穴に入り込んで目詰まりしていきます。
こうなると包丁が砥石に引っ掛からなくなり研いでもなかなか研げない状態に陥ります。
これを解消する作業をドレッシングと言います。
作業としては面直しとほぼ同じですがドレッシング専用の道具があります。
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必要な物
砥石のメンテナンス用品はいろいろなものがありますが
これを持っていればほぼ砥石の問題は解決できます。
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面直し、つまり砥石を研ぐための石ですね。
砥石は使用していくとすり減っていきますが、面直しも実は長いこと使用しているとすり減っていきます。(砥石よりはずっと長持ちしますが)
なぜこの面直しなのか、なぜこれがあれば砥石のメンテナンスはほとんどの問題を解決できるかを解説していきます。
なぜこの面直しなのか
勿論面直しにも沢山の種類がありますしこれをお勧めした理由も勿論あります。
こちらの面直しの最大のメリットは砥石よりも大きいことです。
どういうことかといいますと、
普通は面直しを手に持って砥石にこすりつけますが
この面直しは逆です。砥石を手に持って面直しにこすりつけます。
砥石よりも面直しが大きいため常に砥石全体に均等に力を加えやすいので確実に砥石を平面に直しやすいです。
早く面直しをするだけならダイヤモンド面直しなどのほうがスピードは速いですが
どうしても砥石のほうが大きいので砥石全体にむらなくこすりつけるのに慣れがいります。
砥石でやってはいけないこと、やった方がいいこと
次に砥石保管時のやってはいけないこと、気を付けたほうがいいことです。
ただこれだけだと専門用語も出てくるのでわかりにくいので順番に解説します。
やってはいけないこと
- 気温の変化が激しいところに放置する→割れる、ヒビが入る
- 湿気が多いところに放置する→割れる、ヒビが入る、砥石が軟化する
- 使用した後ふき取らずに保管する→割れる、ヒビが入る。ただしビトリファイド(漬け込むタイプの砥石はふき取らなくても大丈夫)
- 長時間直射日光に当てる→割れる、ヒビが入る
- 砥石の上に重いものを乗せる(砥石を重ねていた)→割れる、ヒビが入る
- 砥石を落とす、強い衝撃を当てる→割れる、ヒビが入る
- 形がいびつな砥石を使用する→包丁の形が変わる、切れなくなる
- つるつる滑る砥石を使い続ける→研いでも切れない、研ぐのに時間がかかる
気を付けること、やった方がいいこと
- 砥石は水に漬け込むものと漬け込まないものがある。購入前によく確認しよう。
- 漬け込まないタイプは使用時はすぐに使えて便利だが特に湿気に弱いので使用後は水分をふき取る。保管時も湿気はさける。どちらにもメリットデメリットがある。
- 砥石の形が変わってきたら面直しをする。面直しはできるだけ面直し砥石を使用する。
- 砥石がつるつるしてきた(目詰まりしてきた)、研げなくなってきたらドレッシングをする、もしくは面直しをする。専用のドレッシング砥石を使用してもいいが面直しで平面にもできる上に大抵の目詰まりもなくなるのでお好みで。
- 砥石を水につけすぎて柔らかくなってしまったらサンドペーパーなどで削る。それでももとにもどりそうにないなら買い替える。
- 面直し砥石もいつかは形が崩れる・削れなくなる。それでも一般家庭の使用量なら普通に使用すれば十数年くらいは持つ。
砥石の3つの製法
あくまでメンテナンスの説明の補足程度なので専門的な話は避けます。
砥石の詳細は別の記事に書いてますのでそちらを見てみてください。
包丁用の砥石には大きく分けて3つの製造方法があります。
そしてそれぞれ特徴がありますが使用時に1つ注意点があります。
- ビトリファイド製法→水に漬け込んでから使用する
- レジノイド製法→水に漬け込まない
- マグネシア製法→水に漬け込まない
この3つが主な製造方法と注意点です。
この3つを頭の片隅に入れてもらって話を進めたいと思います。
ひび割れ
とにかく砥石を使用・保管するうえで一番気を付けるのは砥石が割れてしまわないようにすることです。
はっきり言って割れてしまった砥石はどうしようもありません。買い替えるしかないです。
天然砥石はもともとヒビが入っているものもありますがそれは一旦おいておきます。
もう一度書きますがひび割れの大半の原因はこちらです。
- 気温の変化が激しいところに放置する→割れる、ヒビが入る
- 湿気が多いところに放置する→割れる、ヒビが入る、砥石が軟化する
- 使用した後ふき取らずに保管する→割れる、ヒビが入る。ただしビトリファイド(漬け込むタイプの砥石はふき取らなくても大丈夫)
- 長時間直射日光に当てる→割れる、ヒビが入る
- 砥石の上に重いものを乗せる(砥石を重ねていた)→割れる、ヒビが入る
- 砥石を落とす、強い衝撃を当てる→割れる、ヒビが入る
ここで先ほどの砥石の製造方法を思い出してもらいたいのですが水に漬け込んでから使用するタイプとそうではないタイプがあったと思います。
そう、砥石って水に漬け込んでから使用するものだと思い込んでいる人が結構いるんですが必ずしもそうではないです。
それは砥石の製造方法によって変わります。少し言い方を変えるとあまり水に漬け込んでは
いけないと言ってもいいです。
理由を簡単に書きます。
ビトリファイド製法
水に漬け込んでから使用するタイプの砥石。
ビトリファイド製法の砥石は高温でしっかり焼き固めているので
砥粒(砥石を生成する成分)の接着が強く水による劣化がほとんどない。水に漬け込んでから使用する必要があります。
ただしあまり漬け込みすぎると他の砥石同様割れたり砥石が柔らかくなったりします。
マグネシア製法
水に漬け込まずに使用するタイプ。
常温乾燥で砥石を固めただけなのであまり水に漬け込むと砥石の中の接着剤がもれてしまう。
レジノイド製法
水に漬け込まずに使用するタイプ。
低温で焼き固めた砥石なのでマグネシアと同じくあまり水に漬け込んではいけない。砥石が柔らかくなって性能が落ちてしまったり最悪割れてしまったりする。
極端な湿気を避けよう
なんとなくですが砥石は湿気に弱いということがわかってもらえたでしょうか。
ビトリファイド製法の砥石はまだ水に強いですがそれでもずっと濡れっぱなしの状態はあまり良くありません。
また砥石が硬いからって上に重たいものを置いてはいけません。普通に割れます。
よく砥石を何段にも重ねて保管する人を見ますがあれも危険です。割れます。
急激な温度変化や直射日光も危険です。特に濡れたままの砥石をそういう場所に放置しているとヒビが入ったり割れたりします。
漬け込むタイプの砥石、漬け込まない砥石のメリットデメリットを上げるとこんな感じです。
漬け込むタイプ
- 10分ほど水につけないと使用できないので時間がかかる
- 使用後はふき取らなくても極端な湿気を避ければ大丈夫
漬け込まないタイプ
- つけなくて良いのですぐに使用できる
- 湿気に弱いので使用後はふき取る必要がある。保管時も湿気を避ける必要がある
湿気に気を付けると書きましたが必要以上に注意する必要はありません。
普通に台所のシンクの下の扉の中でも大丈夫です。
要は普段から濡れるところに放置しなければ良いということです。
家で使うときはこんな感じでベランダでしばらく干してから片づけてます。
砥石の製法の見分け方
では、手持ちの砥石がどの製法で作られているか見分ける方法ですが、
水につけることです。
と言ってもほんの数秒です。その時泡がブクブクと出てくればビトリファイドです。つまり、漬け込んでから使用するタイプの砥石です。
泡が出てこなければマグネシアかレジノイドなのでその砥石は漬け込む必要はありません。
しかし一番の確認方法は購入時に店員さんに聞くことです。
ネットなら説明文を読むことかもしれません。
店員さんに聞けば絶対わかります(わかりませんなんて答えが返ってきたらそんなところで購入するのはやめましょう。粗悪品を販売しているかもしれません)
ネットでも商品の詳細の説明部分に書いているはずなので良く読んで購入しましょう。
面直しの方法
面直しが砥石を平らにする作業というのは冒頭でも書きました。
では実際どうすればいいのか。いくつか方法があります。
- 面直し用の砥石を使う
- 砥石同士をこすり合わせる
- コンクリートなどにこすりつける(おすすめしない)
それぞれメリットデメリットがあります。
面直し用砥石
基本的にはこれをお勧めします。早く、キレイに、確実に砥石を平面に戻せます。砥石を傷つけることもありません。
最大のデメリットは専用の面直し砥石を購入するので他の方法よりコストがかかること。
安いもので数千円、ダイヤモンド面直しになると1万円を軽く超えます。
ただしダイヤモンド面直しになるとものすごい硬度を持っているのでへこむことがほぼありません。(面直し砥石も砥石なのでいつかへこんできます)
なので長期的に見ればダイヤモンド面直しが高いかと言われたら一概にそうは言えません。
それに面直し砥石も一度購入すれば数年、一般家庭の使用量なら一生物になるかもしれません。長い目で見ればそこまで高い買い物ではないはずです。
砥石同士をこすり合わせる
砥石同士、特に荒砥とこすり合わせて平らにする方法です。
お店でもたまに見かける方法でやってはいけないとは言いませんがあまりお勧めはしません。
理由としては、
面直し砥石に比べると時間がかかる、そもそも砥石を何個か持っていないとできない、砥石どうし両方平面になっていないと意味がないのでやはり時間がかかる、当然砥石の両方がすり減っていくなどのデメリットがあります。
砥石は何個か持っているが面直しまで買うのは踏みとどまるっていう人にはお勧めです。
レンガやブロックにこすりつける
お勧めしません。砥石が傷だらけになってしまいます。力加減を間違えるとひび割れの可能性もあります。
どうしても他に方法がない時に最後の手段として程度で。やった後はやはり面直しを使用して表面をきれいにしたほうが良いでしょう。
メリットは何も購入しなくていいのでコストがかからないことぐらいでしょうか。
面直しのやり方
実際の面直しのやり方ですがいきなり面直しを始める前に油性マジックで砥石に印を書きます。
面直しで難しいのは本当に平らになったどうかを見極めることです。
面直しが終わった後にこの印が全部消えていればすべての表面が削れたということです。
次に面直し砥石を水で濡らします。(濡らさないものもあるかもしれないのでそこは説明書を読んでください)金剛砂というアイテムもあります。これをかけると研削力があがって面直しの時間が短縮されます。
砥石(もしくは面直し砥石)を固定します。濡れ雑巾を敷いたり砥石台で固定します。
砥石全体になるべく均等に力をかけます。(一部分だけこすれるのを防ぐため)
砥石全体をできるだけ均等に使いながらこすり合わせます。(一部分だけでこするとそこだけが減っていきます)
平らになったかどうか確認します。ペンの跡がすべて消えていれば完了です。
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勿論面直しにも沢山の種類がありますしこれをお勧めした理由も勿論あります。
こちらの面直しの最大のメリットは砥石よりも大きいことです。
どういうことかといいますと、
普通は面直しを手に持って砥石にこすりつけますが
この面直しは逆です。砥石を手に持って面直しにこすりつけます。
砥石よりも面直しが大きいため常に砥石全体に均等に力を加えやすいので確実に砥石を平面に直しやすいです。非常に初心者の方向けの面直しと言えます。
早く面直しをするだけならダイヤモンド面直しなどのほうがスピードは速いですが
どうしても砥石のほうが大きいので砥石全体にむらなくこすりつけるのに慣れがいります。
しかしスピードはこちらの方が早く面直し自体もダイヤモンド制で硬くすり減りにくいので慣れている人にはこちらがお勧めです。
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砥石の目詰まり
冒頭でも書きましたが砥石でしばらく研いでいるとつるつる滑ってあまり研ぎにくく感じることがあると思います。これが砥石の目詰まりです。
包丁を研いだ時の研ぎクズが砥石の表面の砥粒と砥粒の間に詰まっている状態。
これにより包丁が砥石に引っ掛からなくなってつるつるした感触になり研ぎにくくなった状態です。
これを解消する作業をドレッシングといいます。
ドレッシング
面直しと似ていますが以下の方法があります。
- 砥石通しをこすり合わせる
- 面直しでこする
- ドレッシング用の砥石を使う
砥石通しでこする場合は番手ができるだけ近いものを使います。
面直しでこすってもいいです。
というより面直しを普段からしていれば目詰まりはまず起きないと言ってもいいです。面直しをすることで研げない砥石の大体が原因解決できます。
もしくは専用のドレッシング砥石を使います。
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面直しだと確かに少し多がかかりな作業なのでサッと目詰まりだけ解消したいときなんかはこちらがお勧めです。道具も面直しに比べると安価です。
YouTubeで分かりやすい動画がありましたのでこちらにリンクをはっておきます。
砥石の目詰まりを直す シャプトン 復活砥石 – YouTube
砥石の軟化
砥石を成型するのに接着剤を使用しているのは最初の表にも書いていますが、砥石を水に漬け込みすぎるとこの接着剤が溶けて流れ出し砥石自体が柔らかくなってしまうことがあります。
これを砥石の軟化といい、こうなった砥石はそのままでは本来の性能を発揮できません。
軟化してしまった場合、柔らかくなった表面をサンドペーパーなどで削り柔らかくなっていない表面が出てくるまで削る必要があります。
それでももとに戻らない場合は水が浸透しきってしまい
元の状態に戻すのは難しいかもしれません。そうなると砥石の買い替えをする必要があります。
まとめ
長々と書いてきましたが最後に簡単にまとめたいと思います。
まずはやってはいけないことのおさらいです。
やってはいけないこと
- 気温の変化が激しいところに放置する→割れる、ヒビが入る
- 湿気が多いところに放置する→割れる、ヒビが入る、砥石が軟化する
- 使用した後ふき取らずに保管する→割れる、ヒビが入る。ただしビトリファイド(漬け込むタイプの砥石はふき取らなくても大丈夫)
- 長時間直射日光に当てる→割れる、ヒビが入る
- 砥石の上に重いものを乗せる(砥石を重ねていた)→割れる、ヒビが入る
- 砥石を落とす、強い衝撃を当てる→割れる、ヒビが入る
- 形がいびつな砥石を使用する→包丁の形が変わる、切れなくなる
- つるつる滑る砥石を使い続ける→研いでも切れない、研ぐのに時間がかかる
次に注意点とメンテナンス方法です。
- 砥石は水に漬け込むものと漬け込まないものがある。購入前によく確認しよう。
- 漬け込まないタイプは使用時はすぐに使えて便利だが特に湿気に弱いので使用後は水分をふき取る。保管時も湿気はさける。どちらにもメリットデメリットがある。
- 砥石の形が変わってきたら面直しをする。面直しはできるだけ面直し砥石を使用する。
- 砥石がつるつるしてきた、研げなくなってきたらドレッシングをする、もしくは面直しをする。専用のドレッシング砥石を使用してもいいが面直しで平面にもできる上に大抵の目詰まりもなくなるのでお好みで。
- 面直し砥石もいつかは形が崩れる・削れなくなる。それでも一般家庭の使用量なら普通に使用すれば十数年くらいは持つ。
こちらに初心者の方にもお勧めの砥石を紹介しているので
良ければ参考にしてください。
最後までありがとうございましたm(__)m
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